かろうじて年1更新でこの話を書きたくなかったし,書くことがいやになる仕事状況なのだけれども,考えをまとめておきたいと思ったので書いてみた.あまり裏取りしてないのであくまで個人の感想で.ちなみにタイトルはこれを書くきっかけになったネットの書き込みから.
現時点でというよりも,感染増加を繰り返すたびに,確かに重症化しやすさは下がっているように思われる.それは,PCR陽性者数と,COVID-19(とSARS-CoV2を含めて面倒なので以下コロナと書く)による死者数の増減を示したチャートを見ればなんとなく理解できるし,そういうものだと,専門家も初期から言ってはいた.であるならば,欧米を見習ってコロナ前の社会に戻そうという話を散見するようになってきた.が,それは時期尚早というか,不可能に近いと思われる.
なぜ不可能なのかというと,日本でいわゆるコロナ対策を撤廃すれば,必ず医療システムがたち行かなくなるためである.現時点で日本はコロナ対策を撤廃していないが,それでもシステムは正常に機能していない.その原因となっているのが,コロナの感染性(伝染性?)の高さと重症化しやすさのバランスであると思われる.
現時点で,コロナはかなり感染性が高い.これは,病院や高齢者施設でいわゆるクラスターが多発していることから明らかである.よく比較に出されるインフルエンザよりも高いであろうことも明らかである.市中ではインフルエンザといっても,大して注意は払われてこなかったが,病院等でインフルエンザ感染が生じれば,最悪病棟閉鎖等の医療の提供がストップする事態であった.そのようなことを起こさないために医療従事者等は,それなりのコストと注意を払って医療システムを運用してきた.彼らのほぼ無償の努力によって,市中であればインフルエンザはたいしたことではないという認識が支えられてきたわけである.濃淡はあるにせよ,この認識は全てのエッセンシャルサービスに共通するものであると思われる.しかし現在のコロナの感染性は,努力で対応できるレベルを大きく超えてしまっている.であるならば,医療者を含むエッセンシャルワーカーに感染を伝播させないように全員が努力することによって,社会機能を維持すべきであろうことは自明であると思われる.
よくコロナを5類に分類しなおせば,医療崩壊は起きない,コロナ患者をみない病院があることが問題だと言われる.我々の側の分類を変えたからといってウイルスの性状が変化するわけではないのだから,コロナ以外の患者を守るためにコロナ患者を受け入れられない医療機関がでてくるのは当然だろう.そう考えると分類見直しはなんの意味ももたず,単に国民に向けた誤ったメッセージとなるだけであることは明白である(が,ほぼ間違いなく分類は変更され,新たな軋轢と分断を招くことになるだろう).
海外では,このような事態に至っていないともいわれる.それが事実であるかどうかはともかくとして,どのような違いがあるのかを研究することは重要であると思われる.医療システムへの国の関与が大きく,コロナ受け入れを強制できるから(英国はどうなった?)とか,初期に日本よりも多くの者が感染して集団免疫状態となっている(それは不可能という話になったのではなかったか?)とか言われているが,すぐに見つかるものに納得できるものはない.
いずれにしても,コロナ以前の社会に戻るためには,コロナの感染性が下がらないという前提のもと,その病原性が入院患者や高齢者が感染しても問題が生じないレベルにまで低下する(これを代替できるのが,その状態を実現できる有効な治療薬もしくはワクチンである)必要があり,おそらく短期的には実現しないだろうと思われる.従って,現状のままコロナがないものとして社会を進行させていくことは,医療や介護の領域における(あるいはより多くのエッセンシャル)サービスの質の大幅な低下(受診できない・入院できない・治療が遅れる・施設にもっと入所できなくなる・施設内での感染発生による死亡率が高止まりする)を受け入れることと同義であろう.
それでいいんですか?覚悟できてるんですか?という話である.