全般的なことをいえば,ここのところ,小説を全く読んでいなかったということもあるのかもしれないけれども,なんとなく情感に欠ける文章だと思われた.なんというか,箇条書きのようであるというか,サマリのようであるというか.
映像化されたものもまた,全く見ていないので,それとの比較という観点から何かを書くわけにもいかない.“泣ける”ということで,カテゴライズするならば,この種の作品で,ほとんど手放しでほめられる(泣ける)ものをいくつも知っている.たとえば,これまた映像化されることになったらしい,大崎善生の「アジアンタム・ブルー」.ストーリーの構造はそっくりだ.(というよりも,こういったタイプの小説というのは非常に多い.まあ,それだけ求められているということなんだろうけれども) あるいは,村上春樹の「ノルウェイの森」もこのタイプだろう.読んでいる最中にこの2作を想起して,比較しながら読んだ.そうすると,どうしても物語としての起伏の無さが気にかかった.
そんなことをやっていると,とてもではないけど“泣きながら,一気に読みました”なんてことにはならない.
そして,読み終わって考えたのは,本当にこの小説に必要だったタイトルはどんなものだったのかということ.現行のタイトルは著者の意図するものではなかったという話を聞いた.もともとはソクラテス云々というものだったとか.それでは,売れなかったかもしれないけれど,意図した内容を表すタイトルがあった方が,著者にとっても読者にとっても幸せであったのではないだろうか.