2005/12/30

“すべてを失った,「僕」のラスト・アドベンチャー”

 村上春樹「羊をめぐる冒険」のあらすじより.

 2005年は,試験に始まり,試験に終わった年だったといえる.はじめの試験は,いやなだけの試験だった(あくまで僕にとって).あとの試験は,苦しいながらも楽しい試験だった(これもまた,僕にとって).

 “いやなだけの試験”は二日間あって,最終日は僕の誕生日だった.何歳の誕生日だったかは忘れたけれど,雪が降っていたことを覚えている.全てが終わって,H浦氏(どうしているんだろう.明日にでも連絡をとってみよう)と食事に行って,大学から下宿まで「僕らは静かに消えていく」を歌いながら歩いて帰った.散らかった部屋を片づけて,ウイスキーを浴びるように飲んだ.それから,風呂に入って読んだのが,「スプートニクの恋人」だった.

 なぜそれを選んだのかはわからない.村上春樹だったら,「羊をめぐる冒険」の方が好きだし,状況的には白石一文の「草にすわる」でもよかったはずだ.本当に“全ての事象に意味がある”のなら,この選択にも意味があったのかもしれない.

 白石一文.今年は「一瞬の光」を何度も読んだ.札幌まで行って,わざわざハードカバー版も購入したくらい入れ込んだ.研究室がこの作品のストーリーのような状況だったからだろうか.どこがどう似ている状況なのかはうまく説明出来ないけれども.

 今年出版された「私という運命について」もなかなかよかった.それでも,やはり一番好きなのは「一瞬の光」だと思う.

 季節は進んで,セミナー・学会・セミナー・学会・試験・卒論といった順序で今に至る.そんな生活の中で,頭に残る本が思い浮かばない.あえて挙げれば「東京奇譚」くらいか.

 やはり,今年僕は多くのもの……とはいわないまでも,重要なものを失ってしまったように思う.
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